Power Automate Desktop から AI RPA へ:30 日の壁と自己修復
Power Automate は、Microsoft 365 を使う会社で急速に広がっています。MM総研が 2024 年に発表した調査では、中堅・大手企業での利用シェアで Power Automate が 24% となり、初めて 1 位になりました。Windows の PC で画面を操作する Power Automate for desktop(以下、Power Automate Desktop)は、条件によっては追加料金なしで使えることも広がった理由の一つです。
一方で、使い込むほどに、無料で使える範囲の外に出る場面や、「30 日の壁」と呼ばれる期限、データの扱いの問題にぶつかります。このガイドでは、それぞれの条件を Microsoft の資料をもとに整理し、Power Automate に残す業務と移す業務の見分け方、移行の手順を解説します。
要点
- 無料で使えるのは、Microsoft アカウントで手元の PC で人が起動する使い方。クラウドからの起動や無人の実行には有償のアカウントが要る
- 「30 日の壁」は、クラウドフローの実行が最長 30 日、承認が最長 28 日で止まることを指す
- AI の自己修復はプレビューで、実行中だけの回復。組織の Premium アカウントと、地域をまたいだデータの移動の許可が要る
無料で使える範囲と、有償になる条件
| 使い方 | 必要なもの |
|---|---|
| 手元の Windows の PC で、人が起動してデスクトップフローを動かす | Microsoft アカウント(追加料金なし) |
| クラウドフローから起動する、スケジュールで動かす | 組織のアカウントと有償のライセンス |
| 人がいない状態で動かす(無人実行) | 組織のアカウントと、無人実行のためのライセンス |
| AI による自己修復(プレビュー) | 組織の Premium アカウント |
Premium は、1 ユーザーあたり月 2,248 円相当(年払い、税別)です。個人の PC で人が起動するフローから始めた自動化を、部門の業務として定時に無人で動かそうとすると、ここで有償の契約と、管理された実行環境が必要になります。
「30 日の壁」とは
「30 日の壁」は、Power Automate のクラウドフローの実行に期限があることを指して使われる言葉です。Microsoft の資料に書かれている期限は次のとおりです。
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 実行の継続時間:30 日 | 1 回の実行は最長 30 日。30 日を過ぎると、保留中のステップはすべてタイムアウトする |
| 承認の待ち時間:28 日 | 承認は 28 日まで待つことができ、それを超えるとフローは失敗する |
| 実行の履歴の保持:30 日 | 実行の履歴は 30 日間保持される |
| 使われていないフローの停止:90 日 | トリガーが 90 日動かなかったフローは停止される(停止の 30 日前に通知。Premium などのライセンスを持つ所有者のフローは対象外) |
| 試用版:30 日 | 有償の機能は 30 日間試用できる |
現場で問題になりやすいのは、承認の期限です。承認者が休暇などで長く応答しないだけで、フロー全体が失敗します。月をまたぐ承認や、複数の人が順に確認する業務では、リマインドやエスカレーションの仕組みを別に組み込む必要があります。
AI による自己修復(プレビュー)
Power Automate Desktop には、画面の要素が見つからないときに AI が要素を探し直す「自己修復」の機能があります。2026 年 10 月時点ではプレビューで、Microsoft の資料には次の条件と注意書きがあります。
- 実行中だけの回復:自己修復はランタイムだけの機能で、フローそのものは直りません。後で人がフローを修正する前提です
- 意図しない要素を選ぶことがある:AI が意図しない UI 要素を識別する場合があると注意書きされています
- 必要なもの:組織の Premium アカウント、Power Automate for desktop 2.66 以降
- データの移動:米国以外の地域では、「地域間でデータを移動する」設定を有効にする必要があります。使われるモデルは GPT-4.1 mini と Claude Sonnet 4.5 です
- 使えない環境:政府向けやソブリンクラウドでは使えません
画面の内容を地域の外の AI に送ってよいかは、情報システム部門の方針によります。送れない場合は、この機能を使えません。
Power Automate に残す業務、移す業務
| 業務の状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 の中で完結し、クラウドの AI に送ってよいデータを扱う | Power Automate に残す | Microsoft 365 との連携の強みが生きる |
| 個人が手元で起動する、小さな定型作業 | Power Automate に残す | 追加料金なしで使える |
| 画面の内容を社外や地域の外に出せない | データを社内に置いたまま動く自動化に移す | 自己修復の前提となるデータの移動ができない |
| 承認が長引き、28 日の期限や手作りのリマインドに悩んでいる | 承認と記録を組み込んだ自動化に移す | 業務の流れの中で人の判断を扱える |
| 個人の PC で作られ、作った人しか直せない | 業務の担当者が会話で直せる自動化に移す | 作った人の異動で止まらない |
| 社外の Web システムを操作し、予告なく画面が変わる | 覚え直した操作を保存する自動化に移す | 同じ変更で毎回回復する必要がない |
移行の手順
- フローの一覧を集める:Power Platform の管理センターや各環境から、デスクトップフローとクラウドフローの一覧、所有者、実行の履歴を集めます。実行の履歴は 30 日しか残らないため、早めに書き出します
- 止まりやすさと影響で順番を決める:失敗の回数、承認の期限切れの回数、止まったときの業務への影響で、移す順番を決めます
- 業務の言葉で書き直す:フローを 1 アクションずつ写すのではなく、業務の流れを言葉で書き、人が判断する所と確かめる所を明記します
- PoC で確かめる:本番と同じ画面とデータで動かし、画面を変えても動き続けるかを確かめます
- 並行稼働してから切り替える:繁忙期を含めて並べて動かし、結果を突き合わせてから切り替えます
各ステップの詳しい進め方は「RPA から AI RPA への切り替え手順」で解説しています。
Power Automate Desktop と Kitewell の違い
| 観点 | Power Automate Desktop | Kitewell |
|---|---|---|
| 作り方 | アクションを並べてフローを作る | 手順を業務の言葉で書く。AI アシスタントとの会話で作り、差分を確かめて適用する |
| 画面が変わったとき | 自己修復(プレビュー)が実行中に回復させる。フローの修正は人が行う | 覚えた手順で進めないとき、AI が画面を読み直して操作を覚え直し、次からはその操作を繰り返す。覚え直した操作は実行の記録に残る |
| データと AI | 自己修復には、米国以外ではデータを地域の外に移す設定が必要 | 社内やローカルの AI モデルを選べば、画面の内容は外部に送られない |
| 承認 | 承認は 28 日まで待てる | 承認のステップで人が判断し、いつ、どう判断したかが記録に残る |
| 動かす場所 | Windows の PC | macOS と Windows の PC、社内のサーバーや閉域網 |
| 料金 | 手元の実行は追加料金なし。Premium は 1 ユーザーあたり月 2,248 円相当(年払い、税別) | 法人向けの Team と Enterprise は PC の台数に応じたお見積りで、利用者の人数では増えない |
Power Automate の情報は 2026 年 10 月時点の Microsoft の資料によります。製品の機能は更新されるため、最新の情報は Microsoft の公式サイトでご確認ください。
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出典
- MM総研:RPA 国内利活用動向調査 2024(2024 年 7 月 24 日)
- Microsoft:Power Automate の価格、Microsoft アカウントでのデスクトップ フローの利用、デスクトップ フローの要件
- Microsoft:制限と構成、承認の既知の問題
- Microsoft:デスクトップ フローの自己修復
よくある質問
- Power Automate の「30 日の壁」とは何ですか?
- クラウドフローの実行に期限があることを指して使われる言葉です。Microsoft の資料では、1 回の実行は最長 30 日で、30 日を過ぎると保留中のステップはタイムアウトします。承認は 28 日まで待つことができ、それを超えるとフローは失敗します。実行の履歴の保持も 30 日です。承認者が長く応答しないだけでフロー全体が止まる、という形で問題になることが多いです。
- Power Automate Desktop は無料で使えますか?
- Microsoft アカウントで、手元の Windows の PC で人が起動して動かす使い方なら、追加料金なしで使えます。クラウドからの起動や、人がいない状態での実行には、組織の Premium アカウント(1 ユーザーあたり月 2,248 円相当、年払い、税別)などが必要です。
- Power Automate Desktop にも AI の自己修復はありますか?
- あります。2026 年 10 月時点ではプレビューの機能で、画面の要素が見つからないとき、実行中に限って AI が要素を探し直します。フローそのものは直らないため、後で人が修正する必要があります。組織の Premium アカウント、Power Automate for desktop 2.66 以降が必要で、米国以外の地域では「地域間でデータを移動する」設定を有効にする必要があります。使われるモデルは GPT-4.1 mini と Claude Sonnet 4.5 で、意図しない要素を識別する場合があると注意書きされています。
- Power Automate Desktop と Kitewell は併用できますか?
- はい。Microsoft 365 の中で完結し、データの扱いに問題がないフローは Power Automate に残し、止まりやすいフローや、データを外に出せない業務、承認と記録が要る業務だけを Kitewell に移せます。
- データを社外に出さずに、画面の自動操作を AI で直せますか?
- Kitewell は、貴社の PC、社内のサーバー、閉域網で動きます。AI モデルはクラウドの API のほか、社内やローカルのモデルも選べ、社内のモデルを使えば画面の内容が外部に送られることはありません。ただし、小さなローカルモデルでは、通常、画面を操作できません。
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