WinActor から AI RPA への移行ガイド:価格改定と VBScript

WinActor は、国内で広く使われている RPA です。MM総研が 2024 年に発表した調査では、中堅・大手企業での利用シェアは 21% で、Power Automate(24%)に次ぐ 2 位でした。

一方で、ここ 2 年ほどの間に、WinActor を使い続けるうえでの前提がいくつか変わりました。ライセンスの価格改定、生成 AI の機能を使うための新しいライセンス、そして VBScript の廃止方針です。このガイドでは、何が変わったのかを出典つきで整理し、WinActor に残すロボットと移すロボットの見分け方、移行の手順を解説します。

要点

  • 2025 年 1 月から WinActor の価格は概ね 10% 上がり、生成 AI の機能は別のライセンス(年 60 万円〜220 万円程度)になった
  • VBScript は 2027 年ごろに既定で無効になる予定で、WinActor の VBScript 版ライブラリは不具合の修正も予定されていない
  • すべてを置き換える必要はない。止まりやすいロボットと、VBScript の書き直しが必要なロボットから順に、移すかどうかを判断する

WinActor の最近の変化(2026 年 10 月時点)

ライセンスの価格改定

2025 年 1 月 1 日から、WinActor のすべての製品が概ね 10% 値上げされました。ノードロック版の年間ライセンス利用料は、フル機能版が 1,098,680 円、実行版が 300,080 円(いずれも税込)です。ノードロック版は PC 1 台ごとの契約のため、ロボットを動かす PC が多いほど影響が大きくなります。

AI 連携ライセンス

生成 AI の機能を使うための「AI 連携ライセンス」が、2025 年 10 月に発売されました。シナリオの中で生成 AI の応答を使う機能、対話によるシナリオのひな形作成、帳票操作の簡単化などが含まれ、NTT アドバンステクノロジが契約する Azure OpenAI を使うため、利用者が別に AI の契約を結ぶ必要はありません。

価格は、フル機能版が年 2,197,800 円、実行版が年 600,600 円(いずれも税込、2026 年 10 月時点)です。2026 年 10 月からは生成 AI の利用量に上限が設けられ、超える分は追加パックの購入が必要です。

公開されている機能を見る限り、WinActor の AI はシナリオを作る手助けが中心で、画面の変更で止まったシナリオを実行中に直す機能は見当たりません。

VBScript の廃止方針

Microsoft は 2023 年 10 月に VBScript を将来廃止する方針を発表しました。Windows 11 の 24H2 では標準で有効ですが、2027 年ごろには既定で無効になる予定です。

WinActor は、VBScript 版ライブラリの追加や機能拡張、不具合の修正を予定していません。既存のライブラリは引き続き使えますが、2026 年 9 月に発売された Ver.7.7 で加わった、VBScript ライブラリの Python 化を支援する機能は、AI 連携ライセンスでのみ提供されます。

VBScript を使ったライブラリや自作の部品が多いシナリオは、いずれ書き直しが必要になります。その書き直しの時期は、移行を検討するよい機会です。

WinActor に残すロボット、移すロボット

ロボットの状況 おすすめ 理由
社内のシステムを操作し、画面がほとんど変わらず、安定して動いている WinActor に残す 決まった操作を速く繰り返す RPA の強みが生きる
相手のシステムに API や CSV の連携がある 公式の連携に置き換える 画面操作より変更に強く、速く、確実
社外の Web システムを操作し、予告なく画面が変わる 画面が変わっても直せる自動化に移す 直すたびにシナリオを作った人や保守会社に頼る状態から抜け出せる
請求書の読み取りなど、内容の判断や人の確認が要る AI と人の承認を組み合わせた自動化に移す 判断は人、操作は AI と分けられる
VBScript のライブラリや自作の部品が多い 書き直しの時期に合わせて判断する どのみち書き直すなら、そのときに移すほうが手間が少ない
作った人がいない、中身が誰にもわからない まず調べて台帳に載せ、そのうえで判断する 判断の材料がないまま移すと、業務の抜けが出る

作った人のいないロボットの調べ方は「作った人がいない RPA ロボットの引き継ぎ方」で解説しています。

移行の手順

  1. シナリオの一覧と実行の記録を集める:WinActor Manager on Cloud(WMC)などの管理ツール、ロボット用 PC のタスクスケジューラ、共有フォルダから、動いているシナリオと止まった履歴を集めます
  2. VBScript を使っているシナリオに印をつける:VBScript のライブラリや自作の部品を使うシナリオを洗い出します
  3. 止まりやすさと影響で順番を決める:止まった回数、止まったときの業務への影響、直すのにかかる手間で、移す順番を決めます
  4. 業務の言葉で書き直す:シナリオを 1 操作ずつ写すのではなく、業務の流れを言葉で書き、人が判断する所と確かめる所を明記します
  5. PoC で確かめる:本番と同じ画面とデータで動かし、画面を変えても動き続けるかを確かめます
  6. 並行稼働してから切り替える:月末などの繁忙期を含めて WinActor と並べて動かし、結果を突き合わせてから切り替えます
  7. ライセンスを見直す:移したロボットを動かしていた PC のライセンスを、更新の時期に合わせて整理します

各ステップの詳しい進め方は「RPA から AI RPA への切り替え手順」で解説しています。

シナリオの要素は、どう書き直すか

WinActor のシナリオ 業務の言葉で書く手順
ブラウザやウィンドウの要素をクリック、入力 「請求書番号の欄に入力する」のように、対象を画面の見出しで書く
画像で対象を探す 画面の見出しや役割で対象を書く
決まった秒数の待機 「一覧が表示されたことを確かめる」のように、待つ条件を書く
Excel の行を読み、繰り返す 「一覧の各行について」と書き、行ごとに処理する
分岐(条件で処理を変える) 条件を言葉で書き、判断が難しいものは人の確認に回す
エラー時の処理 失敗したステップから再開し、担当者に知らせる

WinActor と Kitewell の違い

観点 WinActor Kitewell
作り方 操作を記録し、シナリオを編集する。AI 連携ライセンスでは対話によるひな形作成も 手順を業務の言葉で書く。AI アシスタントとの会話で作り、差分を確かめて適用する
画面が変わったとき シナリオを修正する 覚えた手順で進めないとき、AI が画面を読み直して操作を覚え直す。覚え直した操作は実行の記録に残る
判断と承認 ロボットの外で人が対応する 承認のステップで人が判断し、いつ、どう判断したかが記録に残る
引き継ぎ 手順書をシナリオとは別に作る アシスタントが作業しながらナレッジを書き、ロボット管理台帳も書き出せる
動かす場所 Windows の PC macOS と Windows の PC、社内のサーバーや閉域網
料金 ノードロック版はフル機能版 年 1,098,680 円、実行版 年 300,080 円(PC 1 台あたり、税込) 法人向けの Team と Enterprise は PC の台数に応じたお見積りで、利用者の人数では増えない

WinActor の料金は 2026 年 10 月時点の公式情報によります。製品の機能は更新されるため、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。

まずは 1 本で確かめる

Descarty は、止まりがちなロボットを 1 本選び、2 週間で Kitewell に置き換える PoC(30 万円・税別)を提供しています。合意した成功基準を満たさなければ、費用はいただきません。WinActor の更新時期が近い場合は、その前に結果が出るよう計画します。

出典

よくある質問

WinActor のシナリオは、そのまま Kitewell で使えますか?
そのままは使えません。Kitewell は WinActor のシナリオを読み込んで変換するのではなく、業務の流れを日常の言葉で書き直します。座標や画面要素の指定といった古い画面の前提を持ち込まないため、画面の小さな変更に強くなります。
WinActor と Kitewell は併用できますか?
はい。WinActor で安定して動いているロボットは残し、止まりやすいロボットや、判断や承認が要る業務だけを Kitewell に移せます。すべてを一度に置き換える必要はありません。
VBScript のライブラリを使っているシナリオはどうなりますか?
Microsoft は 2023 年 10 月に VBScript の廃止方針を発表し、2027 年ごろには既定で無効になる予定です。WinActor は VBScript 版ライブラリの追加や不具合の修正を予定しておらず、Python 化を支援する機能は AI 連携ライセンスでのみ提供されます。書き直しが必要になる時期に合わせて、移すかどうかを判断するのが効率的です。
WinActor のライセンス費はいくらですか?
2025 年 1 月 1 日からの年間ライセンス利用料は、ノードロック版のフル機能版が 1,098,680 円、実行版が 300,080 円(いずれも税込)です。生成 AI の機能を使う AI 連携ライセンスは別料金で、フル機能版が年 2,197,800 円、実行版が年 600,600 円(いずれも税込)です(2026 年 10 月時点)。
WinActor のロボットがよく止まるのはなぜですか?
多くは WinActor に固有の問題ではなく、記録した時点の画面を前提に操作する仕組みに共通する理由です。操作する Web システムの画面の変更、想定していないポップアップ、表示の遅れ、データの例外、ブラウザや画面の解像度の変化などで、操作の対象を見つけられなくなると止まります。
移行にはどのくらいの期間がかかりますか?
止まりがちなロボット 1 本なら、2 週間の PoC で Kitewell への置き換えを確かめられます。本番の切り替えは、月末などの繁忙期を含む並行稼働を経てから行うことをおすすめします。ライセンスの更新日から逆算して計画します。

切り替える業務の選定から相談する

今のロボットの状況をうかがい、AI RPA に切り替える業務の選定から PoC まで支援します。