Power Automate と AI のブラウザ操作:使い分けの 5 つの基準

Power Automate Desktop で、ブラウザの操作を自動化してきた。最近は ChatGPT や Claude に頼むと、AI がブラウザを開いて、クリックや入力まで進めてくれる。では、これからはどちらを使えばよいのか。

どちらも画面を操作しますが、手順を決めるのが人か AI かという点が違います。この違いが、速さ、結果のぶれ、費用、画面の内容がどこに送られるかに表れます。この記事では、エンジニアでない方に向けて、2 つの仕組みの違いと、2026 年 10 月時点の主なツール、使い分けの 5 つの基準、1 回あたりの費用の試算、業務の例、AI に任せるときの注意を整理します。

結論:回数が多く画面が変わらない作業は Power Automate、少なく変わりやすい作業は AI

  • Power Automate:人が決めた手順を、毎回同じに繰り返す。速く、結果がぶれず、何回動かしても費用はライセンスの分だけ。画面が変わると止まりやすい
  • AI のブラウザ操作:やりたいことを文章で伝えると、AI が毎回画面を見て次の操作を考える。画面が変わっても進めることが多いが、遅く、結果が毎回同じとは限らず、回数に応じて費用や利用枠を使う
  • 画面を操作する前に、連携の仕組みを探す:Outlook や SharePoint のように Power Automate のコネクタがあるサービスは、画面を操作せずにやり取りするほうが確実
  • 取り消しにくい操作は、どちらにも最後まで任せない:振込や発注の確定は、人が確かめてから行う
  • Microsoft も組み合わせを勧めている:画面が変わらない決まった処理には RPA を残し、画面が変わる部分を AI に任せる

2 つの違い:手順を決めるのは人か、AI か

観点 Power Automate(デスクトップフロー) AI のブラウザ操作
手順を決めるのは 人(フローを作るとき) AI(実行のたびに)
頼み方 アクションを並べてフローを作る。操作を記録して作ることもできる やりたいことを文章で伝える
速さ 速い 1 操作ごとに AI が画面を読んで考えるため、遅い
結果 毎回同じ 毎回同じとは限らない
画面が変わったとき 止まりやすい(AI による自己修復はプレビュー) 探し直して進めることが多い
費用 ライセンス。回数が増えても変わらない 操作の回数や利用量に応じて増える。プランに含まれる場合は利用枠の範囲内
画面の内容 手元の PC の中で扱う(自己修復を使う場合を除く) スクリーンショットとして、クラウドの AI に送られる

速さの差は小さくありません。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが 2026 年 5 月に改訂した論文では、人なら数分で終わる作業に、AI のエージェントが数十分かかる例が報告されています。最も成績のよいエージェントでも、必要な数の 2.7〜4.3 倍の操作をしていました。研究用の課題での結果のため、製品によって差はありますが、1 操作ごとに AI が考える仕組みである限り、決めた手順をそのまま流す RPA より遅くなります。

確実さにも差があります。Microsoft は、Copilot Studio の AI による画面操作(コンピューター使用)について、性能は作業や画面によって大きく異なり、ドロップダウンや日付の選択のような部品は扱いにくく、同じ操作を繰り返したり進まなくなったりすることがあると説明しています。

2026 年 10 月時点の主なツール

ツール どこで動くか 決まった時刻に動かす 費用
Power Automate Desktop 手元の Windows の PC 有償のライセンスが要る。人がいない状態なら Process など 手元で人が起動するなら追加料金なし。Premium は 1 ユーザー月 2,248 円、Process は 1 ボット月 22,488 円
Copilot Studio のコンピューター使用 Power Automate for desktop を入れた Windows の PC など 自律型のエージェントのトリガーで動かす 1 ステップ 5 Copilot クレジット(約 6 円)
ChatGPT のクラウドブラウザ OpenAI のクラウドにある別のコンピューター 有料プランは最短 1 時間ごと 有料プランに含まれる
Claude in Chrome 自分の PC の Chrome(拡張機能) Chrome を開いている間 有料プランに含まれる
  • Power Automate Desktop:価格は年払い、税別の 1 か月相当です。画面が変わると止まりやすく、AI による自己修復はプレビューです
  • Copilot Studio のコンピューター使用:2026 年 5 月に一般提供が始まりました。Microsoft が用意する環境でも動かせます(一部はプレビュー)。25,000 クレジットのパックが月 29,985 円で、上位のモデルは 1 ステップ 15 クレジットです。管理者の設定が要る場合があり、金融取引などには使わないとされています。Power Automate Desktop との違いは、「Copilot Studio Computer Use と Power Automate Desktop の違い」で詳しく比べています
  • ChatGPT のクラウドブラウザ:Free と Go を除く有料プランで使えます。スケジュールのタスクは、有効にできる数に上限があります(Plus は 5、Business は 10)。ログインや重要な操作の前で止まって確認を求め、自動の操作を受け付けないサイトもあります
  • Claude in Chrome:Pro、Max、Team、Enterprise のプランで使えます。開いているタブのスクリーンショットを AI が見ます。機密データのある業務のアカウントでは使わないよう、Anthropic が勧めています

2025 年に始まった ChatGPT の「エージェントモード」(ChatGPT agent)は、2026 年 10 月時点で OpenAI のヘルプに提供を終えたと書かれています。ブラウザでの作業は、ChatGPT Work のクラウドブラウザが引き継いでいます。Google の Gemini in Chrome にも、ブラウザを操作して作業を進める機能がありますが、2026 年 4 月の時点では米国の有料プランに限られていました。

AI のブラウザ操作は、名前も機能も数か月で変わります。業務に使う前に、各社の最新の資料を確かめてください。

使い分けの 5 つの基準

基準 Power Automate に向く AI のブラウザ操作に向く
1. 連携の仕組み Power Automate のコネクタや API がある(その場合は画面を操作しない) 連携の仕組みがなく、画面から操作するしかない
2. 回数 毎日、何十件も 月に数回、その都度
3. 画面の変わりやすさ 変わらない(社内のシステム) よく変わる(取引先の Web サイト、SaaS)
4. 結果のぶれ 許されない(金額の入力、照合) 人が確かめられる(調べ物、候補の比較、下書き)
5. 扱うデータ 画面の内容を社外の AI に送れない 社外の AI に送ってよいことを、会社の決まりで確かめてある

1. 連携の仕組みがあるか

画面の操作は、システムどうしをつなぐ仕組みがないときの手段です。Microsoft も、Copilot Studio のコンピューター使用を、API がなくても作業を進められる手段として説明しています。Outlook のメール、SharePoint のファイル、Teams のメッセージのように、Power Automate のクラウドフローにコネクタがあるサービスは、画面を操作しないほうが速く、止まりにくくなります。

2. 何回動かすか

毎日何十件も処理する作業は、Power Automate に向きます。回数が増えても費用が変わらず、速いからです。月に数回の作業や、その都度内容が違う作業は、フローを作る手間のほうが大きくなります。AI に文章で頼むほうが早く済みます。費用の分かれ目は、次の章で試算します。

3. 画面がどのくらい変わるか

社内のシステムのように画面がほとんど変わらないなら、Power Automate で十分です。取引先の Web サイトや SaaS のように、予告なく画面が変わる相手では、Power Automate のフローは止まりやすく、直す手間がかかります。AI は画面をその都度読むため、多少の変更なら進めます。

4. 結果がぶれてよいか

金額の入力や照合のように、毎回同じ結果でなければ困る作業は、Power Automate に向きます。AI は実行のたびに考えるため、同じ頼み方でも、毎回同じ操作になるとは限りません。調べ物や候補の比較のように、結果を人が確かめてから使う作業なら、AI のぶれは問題になりにくくなります。

5. 画面に映るデータを AI に見せてよいか

AI のブラウザ操作では、画面のスクリーンショットがクラウドの AI に送られます。顧客の個人情報や社外秘の数字が映る画面を AI に見せてよいかは、情報システム部門の決まりによります。決まりで認められていないなら、AI のブラウザ操作は使えません。

判断が要るステップ、たとえば書式のばらばらな書類を読む作業をどう分けるかは、「AI エージェントと RPA の使い分け」で解説しています。

費用の試算:1 日に何回動かすと逆転するか

Microsoft の 2 つの製品で、費用の分かれ目を試算します。どちらも価格が公開されているためです。

  • AI(Copilot Studio のコンピューター使用):25,000 クレジットのパックが月 29,985 円なので、1 クレジットは約 1.2 円です。標準のモデルは 1 ステップ 5 クレジットで、約 6 円です。AI が 20 ステップで終える作業なら、1 回約 120 円になります
  • RPA(Power Automate Process):人がいない状態で動かすためのライセンスで、1 ボット月 22,488 円相当です。何回動かしても変わりません
1 日の回数(月 20 日) AI(20 ステップ、1 回約 120 円) RPA(Process、1 ボット)
1 回 月 約 2,400 円 月 22,488 円
10 回 月 約 24,000 円 月 22,488 円
50 回 月 約 120,000 円 月 22,488 円
100 回 月 約 240,000 円 月 22,488 円

20 ステップの作業では、月 187 回、1 日 9 回ほどで費用が逆転します。それより少なければ AI が、多ければ RPA が安くなります。上位のモデル(1 ステップ 15 クレジット)を使うと AI の費用は 3 倍になり、1 日 3 回ほどで逆転します。

この試算には、次の前提があります。

  • AI のステップ数は変わる:同じ作業でも、画面の状態や AI の判断で増えることがあります
  • ライセンスの費用だけを比べている:PC の費用や、フローを作る人、直す人、結果を確かめる人の時間は含めていません。画面がよく変わる相手では、Power Automate のフローを直す時間がかさみます
  • 1 ボットで動かせるのは、一度に 1 本:同時に動かすには、ボットを増やします

ChatGPT や Claude のブラウザ操作は、有料プランの料金に含まれ、プランごとの利用枠の範囲で使えます。1 人が月に数回使う程度なら追加の費用はかかりませんが、1 日に何十件も処理する作業には向きません。

業務の例で振り分ける

業務 向くもの 理由
Outlook に届いた添付ファイルを SharePoint に保存する Power Automate のクラウドフロー コネクタがあり、画面の操作が要らない
毎朝、社内のシステムから売上の CSV を出して Excel にまとめる Power Automate 毎日、同じ画面で、結果がぶれてはいけない
受注メールの内容を、販売管理システムに 1 日 100 件入力する Power Automate。メールの読み取りだけ AI 件数が多く、入力は毎回同じ手順。メールの書式は取引先ごとに違う
月に 1 度、取引先 5 社の Web サイトから請求書の PDF を集める AI のブラウザ操作、または AI が覚えた手順を繰り返す仕組み 回数が少なく、取引先ごとに画面が違い、予告なく変わる
出張のホテルや交通の候補を調べて比べる ChatGPT や Claude 一度きりの調べ物で、手順を決めておけない
振込や発注を確定する どちらにも最後まで任せない 取り消しにくい。確定の前に人が確かめる

AI にブラウザを任せるときの注意

画面に紛れ込んだ指示に従ってしまうことがある

AI のブラウザ操作には、Web ページやメールに隠された指示を、AI が利用者からの指示と取り違えて実行してしまう危険があります。「プロンプトインジェクション」と呼ばれる攻撃です。OpenAI は、受信したメールに仕込まれた指示に従い、AI が不在の返信を書く代わりに、利用者の名前で CEO に退職の申し出を送ってしまう例を示しています。

各社は対策を重ねています。Anthropic は、Claude in Chrome の今の構成で、社内のテストでの攻撃の成功率を 0.08% 未満に下げたとしています。それでも、OpenAI は、ネット上の詐欺と同じように、この攻撃が完全に解決されることはまずないと述べています。

会社の決まりを確かめる

調査会社の Gartner は 2025 年 12 月、企業のセキュリティの責任者に向けて、AI ブラウザを当面ブロックするよう勧めました。理由として、閲覧中の内容がクラウドの AI に送られることによる情報の漏えい、紛れ込んだ指示による誤った操作、社員が義務の研修などを AI に代わりにやらせてしまうことを挙げています。

業務で使う前に、次のことを確かめます。

  • 会社の決まりで、どの AI のブラウザ操作を使ってよいか
  • どのサイトやシステムで使ってよいか
  • 顧客の情報や社外秘の数字が映る画面を、AI に見せてよいか

Anthropic は、機密性の高いアカウントにつながらない、別のブラウザのプロファイルで使うよう勧めています。Microsoft は、コンピューター使用に専用の PC を割り当て、必要最小限の権限のアカウントを使い、操作してよいサイトを決めておくよう勧めています。

取り消しにくい操作の前で止める

各社とも、取り消しにくい操作には慎重です。ChatGPT のクラウドブラウザは、予約の確定や支払いの前に確認を求めます。Claude in Chrome は、金融のサイトにアクセスする前に許可を求め、株の売買はしません。Microsoft は、コンピューター使用を金融取引に使うことは想定していないとしています。

振込、発注の確定、社外へのメールの送信などは、AI が準備したものを人が確かめてから実行する流れにします。

組み合わせ方:AI が覚えた手順を繰り返す

Power Automate と AI のどちらか一方を選ぶ必要はありません。Microsoft は 2026 年 2 月のブログで、画面が変わらない決まった処理には従来の RPA を残し、画面が変わる部分だけを AI に任せる組み合わせを紹介しています。RPA はそのままに、変わりやすい画面の操作や、想定外のダイアログへの対応を AI が受け持つ形です。

Power Automate Desktop にも、画面の要素が見つからないときに AI が探し直す自己修復の機能があります。2026 年 10 月時点ではプレビューで、実行中だけの回復です。フローそのものは直らないため、後で人が直します。条件は「Power Automate Desktop から AI RPA へ」で整理しています。

もう 1 つの形が、AI が一度覚えた操作を繰り返し、画面が変わったときだけ AI が覚え直す仕組みです。毎回の実行は覚えた手順で進むため、毎回 AI が考えるより速く、同じ手順で動きます。AI が考えるのは、画面が変わったときや、画面から値を読み取るときなどです。回数が多いのに画面が変わりやすい、という両方の条件が重なる作業に向きます。

よくある質問

ChatGPT のエージェントモードはどうなりましたか?

2026 年 10 月時点で、OpenAI のヘルプには、ChatGPT agent は提供を終えたと書かれています。ブラウザでの作業は、ChatGPT Work のクラウドブラウザが引き継いでいます。クラウドブラウザは OpenAI のクラウドにある別のコンピューターで動き、利用者がパソコンを閉じた後も作業を続け、ログインや確認が必要なときに止まります。

AI のブラウザ操作を、毎日決まった時刻に動かせますか?

動かせます。ChatGPT はスケジュールのタスクで、有料プランなら最短 1 時間ごとに動かせます。Claude in Chrome もスケジュールを設定できますが、自分の Chrome の中で動くため、Chrome を開いておく必要があります。ただし、どちらも実行のたびに AI が考え直すため、結果は毎回同じとは限りません。決まった時刻に動かすなら、結果を確かめる手順も決めておきます。

Power Automate Desktop の無料版で十分ですか?

人が画面から起動して動かす使い方なら、追加料金なしで使えます。決まった時刻に動かすには、有償のライセンスなどの条件があります。方法ごとの条件と費用は、「Power Automate Desktop の定期実行」で比べています。

AI に頼めば、Power Automate のフローは要らなくなりますか?

なくなりません。毎日何十件も処理する作業や、結果がぶれてはいけない作業は、Power Automate のほうが速く、安く、確実です。Gartner も、AI エージェントが当面 RPA に取って代わることはないとしています。

Kitewell で、覚えた手順を繰り返す

Descarty の Kitewell は、AI が作って AI が直す AI RPA です。手順を言葉で書くと、AI がブラウザやデスクトップアプリを操作します。

  • 一度うまくいった操作は繰り返す:AI が操作を覚え、次からは同じ手順で繰り返します。繰り返す操作では AI を呼ばないため、回数が増えても AI の利用料が増えにくくなります。Web ページから値を読み取るステップと、言葉で書いた確認は、毎回 AI を使います
  • 画面が変わったときだけ覚え直す:覚えた手順で進めないときだけ、AI が画面を読み直して操作を覚え直します。覚え直したことは実行の記録でわかります
  • 自分の PC で動く:ブラウザは自分の PC で動き、ログインもその PC に残ります。パスワードは AI に送らず、AI には名前だけを渡します
  • 決まった時刻に動かし、大事な所は人が確かめる:毎日、平日、毎週などのスケジュールで動かせます。取り消しにくい操作の前には、人の承認を置けます

Power Automate Desktop のフローは、Descarty の移行ツールで読み込み、同じ手順のまま Kitewell に移せます。新しく作るときは、やりたいことをアシスタントに言葉で伝えると、AI がワークフローを組み立てます。

Kitewell は kitewell.app からダウンロードできます(macOS・Windows)。会社の業務で使う場合は、先行利用パートナーとして一緒に検証できます。

まとめ

  • Power Automate は人が決めた手順を毎回同じに繰り返し、AI のブラウザ操作は実行のたびに AI が考える。この違いが、速さ、結果のぶれ、費用、データの扱いに表れる
  • 連携の仕組みがあれば、画面を操作しない。回数が多く、画面が変わらず、結果がぶれてはいけない作業は Power Automate、回数が少なく画面が変わりやすい作業や調べ物は AI に向く
  • Microsoft の価格で試算すると、20 ステップの作業では 1 日 9 回ほどで費用が逆転する
  • AI に任せる前に、会社の決まり、AI に見せてよい画面、取り消しにくい操作の確認の手順を決めておく
  • 回数が多いのに画面が変わりやすい作業には、AI が覚えた手順を繰り返し、画面が変わったときだけ覚え直す仕組みが向く

出典

自分の仕事なら、今日から始められます

Kitewell は製品サイトからダウンロードして、1 台の PC ですぐに使い始められます。スケジュール実行も含まれ、Kitewell のアカウントは要りません。

会社の業務で使う場合は、先行利用パートナー様を募集しています。 募集要項を見る

対応環境
  • macOSベータ
  • Windowsベータ
  • Linux提供予定