RPA の維持費はいくらか:ライセンス以外の費用と総額
RPA の費用というと、まずライセンス費が思い浮かびます。ところが、ロボットを何年か動かした会社で実際に重くなっているのは、ライセンスの請求書には載らない費用です。止まったロボットを直す時間、直るまでの手作業、ブラウザやスクリプト言語のサポート終了に合わせた一斉の改修。こうした費用は部門ごとの工数に紛れ、合計されることがほとんどありません。
この記事では、RPA の維持費の内訳を整理し、総額を出す方法を試算の例とともに解説します。あわせて、主な RPA 製品の最近の価格改定とサポートの変化を、出典つきでまとめます。
維持費の内訳
| 費用の項目 | 内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| ライセンス | 開発用・実行用のライセンス、管理サーバー | 年間契約が多く、価格改定や体系の変更の影響を受ける |
| 動かす環境 | ロボット用の PC、サーバー、仮想デスクトップ、ロボット用アカウント | OS やブラウザの更新のたびに動作確認が要る |
| 作る費用 | 社内の担当者の工数、外部への開発委託、研修 | 作れる人が限られ、その人の時間が取られる |
| 直す費用 | 画面の変更やエラーへの対応、外部の保守契約 | 部門の工数に紛れて、合計されない |
| 止まった間の費用 | 気づくまでの処理の遅れ、手作業での代替 | 締め日に止まると、残業や支払の遅れにつながる |
| 管理の費用 | 台帳や手順書の更新、棚卸し、監査への対応 | 更新されないまま、いざというときに使えない |
| 改修・移行の費用 | ブラウザやスクリプト言語のサポート終了、製品のバージョンアップへの対応 | 数年に一度、全ロボットに及ぶ大きな改修が来る |
ライセンスと環境は請求書や資産台帳で金額がわかります。見えにくいのは、直す費用、止まった間の費用、管理の費用です。この 3 つは、ほとんどが社内の人の時間です。
最近の価格とサポートの変化(2026 年 10 月時点)
ここ数年、主な RPA 製品では、ライセンスの価格や体系、前提となる技術のサポートに変化が続いています。更新の時期が近い場合は、次の点を確認しておきます。
WinActor
- 価格改定:2025 年 1 月 1 日から、すべての製品が概ね 10% 値上げされました。ノードロック版の年間ライセンス利用料は、フル機能版が 1,098,680 円、実行版が 300,080 円(いずれも税込)です
- AI 連携ライセンス:生成 AI の機能を使うための別のライセンスが 2025 年 10 月に発売されました。現在の価格はフル機能版が年 2,197,800 円、実行版が年 600,600 円(いずれも税込)で、2026 年 10 月からは生成 AI の利用量に上限が設けられ、超える分は追加パックの購入が必要です
- VBScript:Microsoft は 2023 年 10 月に VBScript を将来廃止する方針を発表し、2027 年ごろには既定で無効になる予定です。WinActor は VBScript 版ライブラリの追加や不具合の修正を予定しておらず、2026 年 9 月の Ver.7.7 で加わった VBScript ライブラリの Python 化を支援する機能は、AI 連携ライセンスでのみ提供されます
UiPath
- 価格改定:2023 年 7 月 1 日以降の契約(更新を含む)から、すべての製品の価格が約 10% 引き上げられました
- ライセンス体系:2023 年 10 月 31 日で、オンプレミスプラン(レガシープラン)のすべてのライセンスと Non-Production Robot ライセンスの提供が終了し、更新時に Flex プランへの移行が必要になりました
Power Automate
- デスクトップ版:Microsoft アカウントで、手元の PC で人が起動して動かす使い方なら、追加料金なしで使えます
- 組織での利用:クラウドからの起動や、人がいない状態での実行には、組織の Premium アカウント(1 ユーザーあたり月 2,248 円相当、年払い、税別)などが必要です
ブラウザのサポート終了
Internet Explorer 11 のデスクトップアプリは 2022 年 6 月 15 日にサポートが終了し、2023 年 2 月 14 日に完全に無効になりました。IE を操作していたロボットは、Edge などへの作り直しが必要になりました。WinActor の導入事例では、パーソルテンプスタッフが約 300 業務のすべてのシナリオを Edge に移すために、11 か月のスケジュールを組んでいます。
こうした改修は、ロボットの数に比例して費用がかかり、数年に一度、まとめてやって来ます。
総額の出し方
まず、ロボットごとに次の数字を集めます。正確でなくても、担当者の記憶による概算でかまいません。
- 直近 1 年に止まった回数
- 1 回あたり、原因を調べて直すのにかかった時間
- 1 回あたり、直るまでの間に手作業で代わりに処理した時間
- 台帳や手順書の更新、棚卸しにかかった時間
- 外部に支払った開発・保守の費用
そのうえで、次の式で年間の維持費を出します。
| 費用 | 計算のしかた |
|---|---|
| ライセンス | 年間の契約金額 |
| 動かす環境 | ロボット用の PC・サーバー・アカウントの年間費用 |
| 直す費用 | 止まった回数 × 1 回あたりの直す時間 × 時間単価 + 外部の保守費 |
| 止まった間の費用 | 止まった回数 × 1 回あたりの手作業の時間 × 時間単価 |
| 管理の費用 | 台帳・手順書・棚卸しの時間 × 時間単価 |
| 改修・移行の費用 | 直近の大きな改修の費用 ÷ 次の改修までの年数 |
時間単価には、担当者の人件費に、会社の負担する社会保険料などを加えた金額を使います。
試算の例
仮の数字で試算してみます。ロボットが 20 体あり、1 体あたり年に 4 回止まり、1 回あたり直すのに 3 時間、直るまでの手作業に 2 時間かかり、時間単価を 4,000 円とします。
- 直す費用:20 体 × 4 回 × 3 時間 × 4,000 円 = 96 万円
- 止まった間の費用:20 体 × 4 回 × 2 時間 × 4,000 円 = 64 万円
ライセンス費とは別に、止まることだけで年間 160 万円分の時間が使われている計算です。これに、台帳や手順書の更新、数年に一度の大きな改修が加わります。
実際に計算してみると、止まる回数の多い少数のロボットに費用が集中していることがよくあります。その数体が、置き換えを最初に検討すべき候補です。
AI に置き換えると費用はどうなるか
AI が画面を読んで操作する自動化は、画面の小さな変更では止まりにくく、直す費用と止まった間の費用を減らせます。ただし、仕組みによっては別の費用が増えます。
- 毎回 AI が考えて操作する仕組み:実行のたびに AI モデルの利用料がかかり、時間もかかります。Gartner は、高い頻度で実行するプロセスでは、AI エージェントの費用が RPA のロボットの 30 倍に上る可能性があるとしています
- 一度覚えた操作を繰り返す仕組み:AI を使うのは、初めて操作を覚えるとき、画面が変わって覚え直すとき、画面から情報を読み取るときに限られます。覚えたクリックや入力の繰り返しには、AI の利用料がかかりません
比べるときは、ライセンス費だけでなく、ここまでの総額で比べます。
費用を減らす順番
- 使われていないロボットを廃止する:棚卸しで見つかる、業務がなくなったロボットのライセンスと環境を整理する
- 公式の連携に置き換える:相手のシステムに API や CSV のダウンロードがあれば、画面操作をやめる
- 止まる回数の多いロボットから置き換える:費用が集中している数体から、画面が変わっても直しやすい仕組みに移す
- 台帳で把握し続ける:何に、いくら払っているかを、毎年同じ物差しで見られるようにする
ライセンスの更新時期が近い場合は、そこから逆算して置き換えを計画します。進め方は「RPA から AI RPA への切り替え手順」で、台帳の作り方は「RPA のロボット管理台帳の作り方」で解説しています。
Kitewell の費用の考え方
Descarty の Kitewell の料金は、Kitewell を動かす PC の台数で決まり、利用者の人数では増えません。Team プランをはじめ法人向けプランは、台数と年額の基本料で、規模と必要な管理機能に応じてお見積りします。
一度うまくいったクリックや入力は覚えて繰り返すため、操作のたびに AI を使うことはありません。AI を使うのは、初めて覚えるとき、画面が変わって覚え直すとき、請求書の読み取りのように画面や書類から情報を読み取るときです。AI モデルは、クラウドの API のほか、社内やローカルのモデルも選べます。ただし、小さなローカルモデルでは、通常、画面を操作できません。
まずは止まりがちなロボットを 1 本選び、2 週間・30 万円(税別)の PoC で置き換えを確かめられます。合意した成功基準を満たさなければ、費用はいただきません。詳しくは「導入と料金」をご覧ください。
まとめ
- RPA の維持費は、ライセンス、環境、作る費用、直す費用、止まった間の費用、管理の費用、改修・移行の費用の合計
- 見えにくいのは、直す費用、止まった間の費用、管理の費用で、ほとんどが社内の人の時間
- 主な RPA 製品では、価格改定、ライセンス体系の変更、VBScript やブラウザのサポート終了が続いている
- ロボットごとに止まった回数と時間を集めると、費用が集中する数体が見つかる。そこから置き換える
出典
- WinActor:価格改定に関する追伸(2024 年 11 月 29 日)、価格改定の予告(2024 年 7 月 22 日)、ライセンスの価格
- NTT アドバンステクノロジ:AI 連携ライセンスの発表(2025 年 9 月 4 日)、Ver.7.7.0 の発表(2026 年 8 月 19 日)
- WinActor:VBScript の廃止方針と WinActor の対応
- Microsoft:VBScript の廃止の予定(2024 年 5 月 22 日)
- UiPath:価格改定のお知らせ(2023 年 4 月 24 日)、ライセンスの提供終了のお知らせ(2023 年 7 月)
- Microsoft:Power Automate の価格、Microsoft アカウントでのデスクトップ フローの利用
- Microsoft:Internet Explorer 11 のサポート終了
- WinActor:パーソルテンプスタッフの導入事例
- @IT:AI エージェントは当面 RPA にとって代わることはない(2026 年 1 月 16 日、Gartner による寄稿)
止まる自動化を、直せる自動化へ
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