AI エージェントと RPA の使い分け:判断の基準と組み合わせ方

「決まった作業は RPA、判断が要る作業は AI エージェント」。AI エージェントと RPA の使い分けは、よくこう整理されます。間違いではありません。ただ、実際の業務は 1 つの流れの中に両方が混ざっているため、業務ごとにどちらか一方を選ぶと、どちらを選んでも無理が出ます。

請求書の処理なら、取引先ごとに書式の違う請求書を読むのは AI に向き、会計システムへの入力は毎回同じ手順で行うのが向き、金額の差異を確かめるのは人の仕事です。この記事では、AI エージェントと RPA を業務の中のステップごとに使い分ける考え方と、判断の基準、組み合わせ方を解説します。

結論:業務ではなく、ステップで分ける

  • 判断が要るステップは AI に任せる
  • 毎回同じでよいステップは、決まった手順で動かす(RPA や、AI が一度覚えた手順)
  • 取り消しにくいステップの前には、人の確認を置く

Gartner も、意思決定が必要な場面には AI エージェントを、定型のワークフローには自動化を、単純な検索にはアシスタントを使うところから始めるよう勧めています。今日エージェント型とされる使い方の多くは、エージェントでなくても実現できるとも指摘しています。

AI エージェントと RPA の違い

観点 RPA AI エージェント
動き方 記録した操作を、そのとおりに繰り返す 目的に向けて、実行のたびに次の操作を考える
手順を決めるのは 人(ロボットを作るとき) AI(実行のたびに)
得意な入力 形式のそろったデータと画面 書式のばらばらな書類、メールの本文
画面が変わったとき 操作の対象を見つけられずに止まりやすい その場で探し直すため、止まりにくい
速さ 速い 1 操作ごとに AI の応答を待つ
結果 毎回同じ 毎回同じとは限らない
かかる費用 ライセンスと、作る・直す人の時間 実行のたびの AI の利用料と、結果を確かめる人の時間

Gartner は、AI エージェントが当面 RPA に取って代わることはないとしています。従量制の料金で費用がかさみやすいことに加えて、予測できない結果や規制の順守への懸念など、リスクが高いことを理由に挙げています。

使い分けの 6 つの基準

ステップごとに、次の 6 つで考えます。

基準 決まった手順(RPA など)に向く AI に向く
1. 入力の形 形式がそろっている(CSV、システムの画面) 形式がばらばら(PDF、メールの本文、取引先ごとの書式)
2. 判断 ルールで書ける 文脈を読んで決める
3. 件数と頻度 多い、毎日 少ない、その都度
4. 結果のぶれ 許されない(金額の登録、照合) 人が確かめられる(下書き、分類の候補)
5. 誤りの影響 社外に出る、取り消しにくい(人の承認を組み合わせる) 社内で気づいて直せる
6. 画面の変わりやすさ 変わらない(社内のシステム) よく変わる(取引先の Web サイト、SaaS)

基準どうしがぶつかることもあります。よくあるのは、毎日大量に同じ手順で処理したい(3 と 4 は決まった手順向き)のに、操作する画面がよく変わる(6 は AI 向き)場合です。取引先の Web サイトや SaaS への入力が、その典型です。このときの選択肢は、後で紹介する「AI が覚えた操作を繰り返す」仕組みです。

例:請求書の処理をステップで分ける

請求書を読み取り、会計システムに入力する業務を、6 つの基準でステップごとに分けると、次のようになります。

ステップ 担い手 決め手
届いた請求書を集める 決まった手順 毎回同じ場所から集める(3)
請求元、金額、支払期日を読み取る AI 取引先ごとに書式が違う(1)
発注データと金額を照合する 決まった手順 ルールで判定でき、ぶれが許されない(2、4)
差異のある請求書を確かめる 人 支払の判断と責任は人が持つ(5)
会計システムに登録する 決まった手順(画面が変わったときだけ AI) 毎回同じ操作で正確さが要り、画面は変わりうる(4、6)
結果を記録し、失敗を知らせる 決まった手順 漏れなく毎回行う(3)

AI が担うのは、書式の違いを読み解く部分と、画面が変わったときの対応だけです。人は、差異のある請求書だけを確かめます。同じ業務の流れと効果の試算は、活用例の「請求書の読み取りと会計システムへの入力」で紹介しています。

組み合わせ方の 3 つの形

ステップごとに分けたら、それをどうつなぐかを決めます。形は大きく 3 つです。

1. RPA のシナリオの中で AI を呼ぶ

今の RPA のロボットはそのままに、読み取りや分類のステップだけを生成 AI に任せる形です。たとえば WinActor では、2025 年 10 月に発売された AI 連携ライセンスで、シナリオの中から生成 AI に指示を出し、メールの返信案の作成や画像からのデータの抽出ができます。

今あるロボットを活かせる一方、画面が変わると止まりやすいという RPA の弱点は残ります。

2. AI エージェントから自動化を呼ぶ

AI エージェントが判断し、決まった処理は既存の自動化や API に任せる形です。MCP などの仕組みを使えば、AI エージェントが会話の中から自動化を起動できます。

人が頼んだその場の仕事に向きます。毎日決まった時刻に回す処理は、スケジュールで動く自動化から始めたほうが確実です。誰が、いつ、何を起動したかを記録する仕組みも要ります。

3. 1 本のワークフローにステップとして並べる

決まった手順のステップ、AI のステップ、人の承認のステップを、1 本のワークフローに並べる形です。スケジュールでの起動、記録、承認、失敗の通知を一か所で管理でき、AI の判断を人が確かめてから次のステップに進められます。毎日回す業務には、この形が最も管理しやすくなります。

第 3 の選択肢:AI が覚えた操作を繰り返す

画面がよく変わるのに、毎日同じ手順で回したい。この組み合わせに向けて、AI で画面の変更に対応する仕組みが、RPA 製品にも広がっています。

仕組み 画面の変更への対応
UiPath の Healing Agent UI の操作が失敗したとき、新しいセレクターなどの修正を提案する。実行中に回復させる自己修復の機能もある
Power Automate Desktop の自己修復(プレビュー) 画面の要素が見つからないとき、実行中に AI が最も可能性の高い要素を特定して続ける。実行時だけの機能で、フローの修正は後で人が行う前提
AI RPA(Kitewell) AI が操作を覚え、次からは同じ手順で繰り返す。覚えた手順で進めないときだけ AI が画面を読み直して操作を覚え直し、次からはその操作を繰り返す

違いは、AI が対応した結果を次の実行でどう扱うかと、直すのが誰かです。Power Automate Desktop の自己修復は実行中の回復で、フローの修正は人に残ります。今の RPA 製品を使い続けるなら、まずはその製品の機能を試すのが近道です。

ChatGPT や Claude、Copilot Studio に画面の操作そのものを任せる場合と、Power Automate との使い分けは、「Power Automate と AI のブラウザ操作」で解説しています。

よくある質問

RPA はもう古いのですか?

古くはありません。決まった手順を大量に、速く、毎回同じように処理する仕事には、今も RPA などの決まった手順の自動化が向いています。Gartner も、AI エージェントが当面 RPA に取って代わることはないとしています。RPA が普及した理由、伸びが止まった理由、今の市場の数字は「RPA はオワコンか」で解説しています。

AI エージェントだけで業務を自動化できますか?

人がそばで結果を確かめる仕事なら、できることもあります。毎日大量に回す、締め切りがある、取り消しにくい操作を含む業務では、ステップごとに分けたほうが確実です。導入の前に確かめることは、「AI エージェントを業務に導入する前に確かめる 7 つのこと」でまとめています。

今の RPA のロボットはどうすればいいですか?

問題なく動いているロボットは、そのままでかまいません。止まりがちなロボットと、判断が要るため手作業が残っている業務から、ステップごとの組み方に移します。手順は「RPA から AI RPA への切り替え手順」で解説しています。

Kitewell での使い分け

Descarty の Kitewell は、AI が作って AI が直す AI RPA です。組み合わせ方の 3 つ目の形を、1 つのソフトウェアで組めます。

  • ステップを並べる:画面の操作、AI への質問や判定、Excel の一覧の一括処理、API の呼び出し、人の承認を、1 本のワークフローに並べます
  • 画面の操作は覚えて繰り返す:一度うまくいったクリックや入力は覚えて、次からは同じ手順で繰り返します。画面が変わったときだけ AI が覚え直し、覚え直したことは実行の記録でわかります
  • AI の判断は人が確かめる:一括処理では、AI の判定に確からしさと根拠の引用を表示し、基準を下回る行は人の確認に回します。どのステップにも承認を設定できます
  • AI エージェントもステップに:Claude Code や Codex など 15 種類の AI エージェントを、ワークフローの 1 つのステップとして動かせます。差し戻せば、コメントを添えてやり直させられます
  • AI エージェントから呼ぶ:ChatGPT や Claude、Claude Code から、MCP でワークフローを実行したり、承認したりできます

まずは手作業の業務や止まりがちなロボットを 1 つ選び、先行利用パートナーとして共同で検証できます。詳しくは「先行利用パートナー様募集」をご覧ください。

まとめ

  • AI エージェントと RPA は、業務ごとではなく、業務の中のステップごとに使い分ける
  • 判断が要るステップは AI に、毎回同じでよいステップは決まった手順に、取り消しにくいステップの前には人の確認を置く
  • 迷ったら、入力の形、判断、件数と頻度、結果のぶれ、誤りの影響、画面の変わりやすさの 6 つで考える
  • つなぎ方は、RPA の中で AI を呼ぶ、AI エージェントから自動化を呼ぶ、1 本のワークフローに並べる、の 3 つ。毎日回す業務は 3 つ目が管理しやすい
  • 画面がよく変わる定型の作業には、AI が覚えた操作を繰り返す仕組みが向く

出典

先行利用パートナーとして、貴社の業務で確かめる

本番と同じ画面とデータで Kitewell のワークフローを動かし、処理時間、成功率、止まったときの直しやすさを一緒に測ります。

共同検証は、案件によって中身が違います。システムの連携では、要件と設計を決め、本番と同じ画面で、エラーのときと画面が変わったときまで試します。現場で使う場合は、1 つの部署のパイロットとして、担当者が研修を受けて自分の業務を作り、効果を測ります。

お願いすること

  • 対象業務の窓口となるご担当者(1名)
  • 業務手順書やマニュアル(無い場合は、作業の録画)
  • 検証用のアカウントと、対象の画面へのアクセス
  • 本番に近いサンプルデータ
  • Kitewell を動かす端末
  • 利用する AI モデルの API キー、または社内のモデルサーバー
  • 検証中の定期的なフィードバック
  • 共同検証事例の公開へのご協力
3 社・2027年3月31日まで

貴社の業務で、Kitewell を一緒に検証する

  • 開発者が直接、ヒアリングから本番への移行まで支援します
  • 業務に必要な機能は、優先して Kitewell 本体に追加します
  • 結果は共同検証事例として公開します(社名を伏せた公開もできます)
  • 期間は 1 か月、費用は 50 万円(税別)です。事前に合意した成功基準を満たさなければ、費用はいただきません
  • 本契約に進む場合は、共同検証の費用を初年度の契約金額に充当します

募集要項を見る