自動化の前に確かめる利用規約:レインズ・船会社・求人媒体

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Web システムの操作は、RPA や AI を使えば技術的にはたいてい自動化できます。ただ、技術的にできることと、使ってよいことは別の問題です。業務で使う Web サービスの中には、利用規約でツールによるアクセスを禁止しているものが少なくありません。

この記事では、自動化する業務を選ぶ前に利用規約を確かめる理由と、その方法を解説します。後半では、不動産のレインズ、船会社の追跡サイト、求人媒体、建設業の書類管理サービスについて、実際の規約がどうなっているかを紹介します。

内容は 2026 年 9 月 27 日時点で各規約を確認したものです。規約は改定されるため、実際に自動化する前には最新の規約を確認してください。この記事は法的な助言ではありません。

なぜ利用規約を確かめるのか

ログインして使うサービスの規約は、契約の一部

経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」は、Web サイトの利用規約が契約の内容になるかどうかを、利用者が規約を認識できる状態で同意したと言えるかという観点で整理しています。会員登録して使う業務用のサービスでは、登録時に規約に同意しているのが一般的です。自動操作を禁止する規約に違反すれば、契約違反として扱われる可能性があります。

違反すると、業務そのものが止まる

多くの規約は、違反した場合に予告なく利用を制限・停止できると定めています。業務に欠かせないサービスのアカウントが止まれば、自動化どころか手作業もできなくなります。後で紹介する Maersk のように、不正な利用に対して料金を請求できると定めている例もあります。

アクセスの仕方によっては、相手のシステムに迷惑をかける

2010 年には、岡崎市立中央図書館の蔵書検索サイトにプログラムで繰り返しアクセスしていた利用者が、図書館のシステムが応答しにくくなったことから逮捕される事件がありました(のちに起訴猶予)。規約で認められている場合でも、アクセスの頻度を抑え、相手のシステムに負荷をかけない配慮が必要です。

事例 1:不動産のレインズ

レインズ(不動産流通標準情報システム)は、宅地建物取引業者が物件情報を登録・検索する Web システムです。4 つの地域の不動産流通機構が運営しています。

中部レインズと近畿レインズが公開している利用ガイドライン(2025 年 1 月 1 日改正)は、レインズにアクセスするツールを認めていません。システム会社が提供するレインズ向けのソフトも含め、機構は「一切許容していません」と明記しています。中部レインズのガイドラインは、プログラムを使って網羅的に会員検索を行うことも禁止しています。違反した場合は是正の勧告があり、場合によっては予告なく利用の制限や停止の措置がとられます。

東日本と西日本のガイドラインは一般には公開されておらず、レインズにログインした後に確認できるとされています。

どう自動化するか:レインズの操作は担当者が行います。自動化するのは、レインズへの登録期限や売主への報告の予定の管理、報告書の下書きといった周辺の業務です。例は「専任媒介の法定業務とレインズ登録の期限管理」で紹介しています。

事例 2:船会社の追跡サイト

フォワーダーや通関業者は、担当するコンテナや本船の動きを、船会社の Web サイトで毎日照会しています。

  • Maersk:デジタルサービスの利用規約(第 3.3 条(d))で、コンテンツの抽出を禁止し、Web スクレイピングなどを明示的に認めていません。第 3.5 条では、スクレイピングなどの不正な利用に対して、月額 2 万米ドル以上の料金を請求できると定めています
  • Ocean Network Express(ONE):Web サイトの利用規約(第 4 条)で、スパイダー、クローリング、スクレイピングを禁止事項に挙げています

一方で、どちらも追跡用の公式 API を提供しています。海運業界の標準化団体 DCSA は追跡 API の標準(Track & Trace)を公開しており、DCSA の会員一覧では、Maersk や ONE を含む多くの船会社がこの標準を実装していると示されています。

どう自動化するか:本船やコンテナの動きは、画面ではなく船会社の公式 API から取得します。例は「本船動静の追跡と ETA 変更の荷主への連絡」で紹介しています。

事例 3:求人媒体

人材サービスの会社は、複数の求人媒体の管理画面で求人票を掲載・更新しています。

  • Indeed:利用規約(2026 年 7 月 23 日更新)で、書面による明示的な許可なしに、ボット、スクレーパー、スパイダー、AI やエージェント型 AI などの自動化されたシステムでサイトにアクセスすることを禁止しています
  • マイナビ転職:企業向けの規約に含まれる「MIWS 利用規約」第 7 条で、プログラムなどを使ってシステムに自動的にアクセスする行為を禁止しています。一方で、同じ規約の第 6 条は、応募者管理システムとの公式な連携を定めています

どう自動化するか:掲載や応募者の取り込みは、各媒体が用意する公式な連携の方法で行います。AI が担うのは、求人の依頼内容から各媒体の形式に合わせた求人票を下書きするところです。例は「求人票の作成と各媒体への掲載の準備」で紹介しています。

事例 4:建設業の書類管理サービス

建設現場の労務安全書類を管理する「グリーンサイト」の利用約款(2026 年 4 月 20 日改定)は、サービスへのアクセスを、運営会社が提供するインターフェースを通じた方法に限っています(第 44 条第 4 項)。

どう自動化するか:グリーンサイトへの登録は担当者が行います。AI が担うのは、協力会社から届いた作業員名簿や資格証の写しを読み取り、期限切れや記入漏れを見つけるところです。例は「協力会社の安全書類の確認」で紹介しています。

公式の連携が用意されている例

規約を調べると、画面を操作しなくても済む公式の方法が見つかることがあります。

  • 官公需情報ポータルサイト:中小企業庁が運営する、国や自治体の入札情報の検索サイトです。情報を自動で取得するための API が提供されています。API を使う場合は、利用規約に従い、出典の表示や、アクセスの頻度の制限を守ります
  • 保険会社共同ゲートウェイ:複数の保険会社と契約している代理店が、一度のログインで各保険会社の代理店向けシステムを使えるようにする仕組みです。NTT データなどが提供しています。各保険会社のシステムでの操作は、それぞれの委託契約や利用条件に従います

利用規約の確かめ方

  1. 規約を探す:利用規約、利用ガイドライン、会員規約、API の利用規約を探します。ログインした後にしか見られないものもあります
  2. 言葉で探す:「自動」「プログラム」「ツール」「ボット」「スクレイピング」「クローリング」「機械的」などの語で規約の中を検索します
  3. 公式の連携を探す:API、CSV のダウンロード、データ連携のサービスがないかを確かめます。あれば、画面の操作よりそちらを優先します
  4. 判断できなければ問い合わせる:規約から判断できない場合は、提供元に問い合わせ、回答を記録に残します
  5. 取引先のシステムは契約も見る:取引先が用意した Web-EDI やサプライヤーポータルは、取引基本契約や利用条件も確かめ、必要なら取引先に確認します
  6. 認められていても、負荷をかけない:アクセスの間隔をあけ、必要な画面だけを開くようにします
  7. 定期的に見直す:規約は改定されます。自動化を始めた後も、定期的に確認します

Kitewell での考え方

Descarty の Kitewell の活用例は、規約で自動操作が認められていないサービスの操作を担当者が行い、AI は期限管理や下書き、書類の確認を担う形で書いています。社外の Web サービスを使う活用例では、「PoC で確かめること」に、対象のサービスの規約で自動操作が認められているかの確認を含めています。

Kitewell の Web 操作では、アクセスできるサイトを制限できます。CAPTCHA(画像認証)の突破は行いません。どの業務を、どの方法で自動化するかを決める段階から相談したい場合は、お問い合わせください。

参考資料

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