RPA はオワコンか:普及した理由と、AI で変わること
「RPA はもうオワコンだ」。AI エージェントが話題になるにつれて、こうした声を聞くようになりました。2017 年ごろからのブームで、日本の多くの会社や自治体が RPA を入れました。今も毎日動いているロボットがある一方で、止まったまま直されないロボットや、作ったものの使われていないロボットも残っています。
この記事では、RPA が日本で普及した理由と、伸びが止まった理由を、調査の数字で振り返ります。そのうえで、RPA は本当にオワコンなのか、AI で何が変わり、何が変わらないのかを整理します。
結論:RPA の役目は終わっていない。変わるのは作った後
- 数字の上ではオワコンではない:国内の RPA 市場は 2023 年度に 903 億円で、前年度から 13% 伸びた。都道府県の 98%、指定都市のすべてが RPA を導入している
- 普及した理由は今も残る:今のシステムに手を入れずに済む、現場でも作れる、効果が時間で見える、人を増やせない
- 伸びが止まった理由は、入れた後にある:画面が変わると止まる、直せる人が足りない、作ったロボットが使われなくなる、判断が要る業務に届かない
- AI で変わるのは、作り方と直し方:AI が画面を読んで操作し、手順を言葉で直せる。ただし、すべてを AI エージェントに任せると、費用も時間もかかる
RPA の 10 年を数字で振り返る
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2017 年 | 3 つのメガバンクが、大規模な業務量の削減を相次いで表明。三菱 UFJ は 9,500 人分、三井住友は 4,000 人分の業務量、みずほは約 1 万 9,000 人の削減 |
| 2018 年 | 世界の RPA ソフトウェアの売上が前年から 63.1% 増え、8 億 4,600 万ドルに。企業向けソフトウェアで最も伸びた分野(Gartner) |
| 2018 年 6 月 | 年商 50 億円以上の国内企業で、RPA の導入率が 22%(MM総研) |
| 2018 年 9 月 | 経済産業省の「DX レポート」が、複雑化・ブラックボックス化した既存システムの問題を「2025 年の崖」として警告 |
| 2019 年 4 月 | 大企業で時間外労働の上限規制が始まる(中小企業は 2020 年 4 月) |
| 2019 年 11 月 | 導入率が 38% に。年商 1,000 億円以上の大手企業では 51%(MM総研) |
| 2019 年度 | 国内の RPA 市場が前年度から 56.7% 増え、529 億 7,000 万円に(矢野経済研究所) |
| 2020 年 2 月 | Gartner が、日本の RPA は「過度な期待」のピーク期を抜け、幻滅期の底に向かっていると分析 |
| 2021 年 3 月 | Power Automate Desktop が、Windows 10 で追加料金なしで使えるようになる |
| 2023 年度 | 国内の RPA 市場は 903 億円。伸びは前年度比 13%(デロイト トーマツ ミック経済研究所) |
| 2024 年 3 月 | 年商 50 億円以上の企業の導入率は 44% で、前回から 1 ポイント減。50 億円未満の中小企業は 15%(MM総研) |
| 2025 年 10 月 | RPA を導入済みの自治体は、都道府県の 98%、指定都市の 100%、その他の市区町村の 44%(総務省) |
調査会社によって市場の範囲が違うため、矢野経済研究所とミック経済研究所の金額は直接比べられません。それでも、伸び率が 2019 年度の 56.7% から 2023 年度の 13% に下がったことは読み取れます。
RPA が普及した 4 つの理由
1. 今のシステムに手を入れずに済む
RPA は、人と同じように画面を操作します。API などの連携の仕組みがない古いシステムでも、改修を待たずに、システムの間でデータを移せます。Gartner の担当者は 2019 年、レガシーシステムとつなげられることが RPA の導入の一番の理由だと述べています。
システムを作り直すには、年単位の時間と大きな費用がかかります。2018 年に経済産業省の DX レポートが「2025 年の崖」を警告した後も、すぐに作り直せる会社は多くありませんでした。IPA の「DX 動向 2025」でも、レガシーシステムが一部でも残っている企業は 62.7% でした。RPA は、作り直すまでの間をつなぐ手段として選ばれました。
総務省の調査で自治体が挙げた RPA の業務を見ても、窓口のシステムから基幹システムへの入力、申請書の内容の業務システムへの入力、金融機関のシステムからのデータのダウンロードなど、システムの間の転記が並びます。
2. 現場でも作れる、と期待された
RPA は、操作を記録したり、画面の部品を並べたりしてシナリオを作れます。プログラミングをしない業務の担当者でも自動化を始められる、という点が、多くの会社で導入の決め手になりました。
ただ、実際に作っていたのは、多くの場合、情報システム部門でした。Gartner の 2019 年の調査では、ロボットを IT 部門が開発している企業が 57% と過半数を占めました。推進の体制も、IT 部門が取りまとめて全社で標準化する形が 67% で最も多く、RPA は部門ごとの導入から全社の展開へ移っていました。作れる人が限られていたことは、後で伸びが止まる理由につながります。
3. 効果が時間で見える
「年間◯時間の削減」。RPA の効果は、減った手作業の時間で示せます。三井住友フィナンシャルグループは、2017〜2019 年度の 3 年間に、RPA で 350 万時間、1,750 人相当の業務量を減らしたとしています。自治体でも、旭川市は 53 業務で年 6,460 時間を減らしたと総務省の調査に答えています。
小さな業務から始め、減った時間を示し、次の業務に広げる。この進め方が、稟議を通しやすくしました。
4. 人を増やせず、残業も減らす必要があった
2017 年、3 つのメガバンクが、大規模な業務量の削減を相次いで表明しました。2019 年 4 月には、大企業で時間外労働の上限規制が始まりました。人は増やせず、残業も減らさなければならない。定型の事務を減らす手段として、RPA に予算がつきました。
2021 年 3 月には、Microsoft が Power Automate Desktop を Windows 10 で追加料金なしで使えるようにし、裾野はさらに広がりました。MM総研の 2024 年の調査では、中堅・大手企業での利用シェアで Power Automate が 24% となり、1 位でした。
伸びが止まった 4 つの理由
MM総研の調査で、年商 50 億円以上の企業の RPA の導入率は、2018 年 6 月の 22% から 2019 年 11 月の 38% まで、1 年半で 16 ポイント伸びました。2024 年 3 月は 44% で、前回から 1 ポイント減っています。
伸びが止まった理由は、入れる前よりも、入れた後にあります。
1. 画面が変わると止まる
多くの RPA は、記録した時点の画面を前提に、画面の座標や要素の ID を手がかりに操作の対象を探します。取引先の Web システムのボタンが少し動くだけで、ロボットは止まります。
RPA のベンダー Robocorp が 2022 年に IT チームを対象に行った調査では、69% が少なくとも週に 1 回はロボットが壊れると答え、41% が直すのに 5 時間以上かかると答えました。ベンダーが行った調査であることには注意が要ります。止まる原因は「RPA が画面変更で止まる理由」で詳しく解説しています。
2. 直せる人が足りない
総務省の 2025 年度の調査で、RPA を導入済みか実証中の自治体 842 団体が挙げた課題(3 つまで)は、「取り組むための人材がいない又は不足している」が 71%、「RPA の技術を理解することが難しい」が 42%、「取り組むためのコストが高額であり、予算を獲得するのが難しい」が 30% でした(総務省の公表データを Descarty が集計)。MM総研の 2024 年の調査でも、全社で自動化を進めるには外部の支援が必要だと答えた企業が約 7 割でした。
シナリオを作れる人は限られていました。作った人が異動すると、中身がわかる人がいなくなります。引き継ぎ方は「作った人がいない RPA ロボットの引き継ぎ方」で解説しています。
3. 作ったロボットが使われなくなる
同じ総務省の調査で、作成済みと利用中のシナリオの数をどちらも答えた 730 団体を合計すると、作成済みは 22,801 本、利用中は 16,412 本でした。28% にあたる約 6,400 本は、使われていません。
業務そのものがなくなったシナリオも含まれるため、すべてが失敗というわけではありません。ただ、842 団体の 66% が、RPA の効果を測る KPI を「設定していない」と答えています。どのロボットが使われ、どれが止まっているのかを、誰も見ていない状態になりがちです。一覧の作り方は「RPA のロボット管理台帳」で解説しています。
4. 判断が要る業務に届かない
RPA は、決めた操作を決めたとおりに繰り返します。書式がばらばらの請求書を読む、メールの内容を見て振り分ける、といった業務は自動化しにくく、手作業として残りました。自動化できたのは業務の中の定型の部分だけで、前後の判断は人が担い続けました。
RPA はオワコンか:数字で見る今
数字を見る限り、RPA はオワコンではありません。
- 国内の RPA 市場は、2022 年度の 795 億円から、2023 年度は 903 億円に伸びた。ミック経済研究所は 2024 年度を 1,034 億円と見込む
- RPA を導入済みの自治体は、都道府県の 98%、指定都市の 100%、その他の市区町村の 44%
- 年商 50 億円未満の中小企業の導入率は 15% で、前の年から 3 ポイント増えた
一方で、急な伸びの時期は終わりました。国内の市場の伸びは 2019 年度の 56.7% から 2023 年度の 13% に下がり、中堅・大手企業の導入率は 44% で横ばいです。RPA の大手 UiPath も、2026 年 1 月期の ARR(年間経常収益)の伸びは 11% で、自社を「エージェント型の自動化」の企業と位置付けています。
使う会社は減っていません。悩みの中心が、どう入れるかから、入れたロボットをどう保つかに移った、と見るのが実態に近いでしょう。
AI で変わること、変わらないこと
AI エージェントへの期待は高まっています。Gartner は 2025 年 8 月、日本のクラウドと AI のハイプ・サイクルで、AI エージェントを「過度な期待」のピーク期に置きました。一方で、AI エージェントが当面、RPA に取って代わることはないともしています。高い頻度で実行するプロセスでは、AI エージェントの費用が RPA のロボットの 30 倍に上る可能性があり、結果も毎回同じとは限らないためです。
伸びが止まった 4 つの理由に照らすと、AI で変わることと、変わらないことは次のとおりです。
| 伸びが止まった理由 | AI で変わること | 変わらないこと |
|---|---|---|
| 画面が変わると止まる | AI が画面を読んでボタンや入力欄を探すため、小さな変更では止まりにくい | 業務の手順そのものが変われば、手順を直す必要がある |
| 直せる人が足りない | 手順を業務の言葉で書き、会話で直せる。専用の開発画面の知識が要らない | 業務の持ち主と、直した結果を確かめる人は要る |
| 作ったロボットが使われなくなる | AI だけでは変わらない。直しやすくなれば、止まったまま放置されるロボットは減る | 台帳、測る数字、やめる基準は人が決める |
| 判断が要る業務に届かない | AI が書類や画面から値を読み取る | 取り消しにくい操作の前には、人の承認が要る |
すべてを AI エージェントに任せない
実行のたびに AI が画面を読んで考える AI エージェントは、画面の変化に強い一方で、1 つの操作ごとに AI の応答を待つため遅く、実行のたびに利用料がかかります。毎日数百件を処理する業務で、毎回 AI に考えさせる必要はありません。
現実的なのは、AI が一度覚えた操作を RPA と同じように繰り返し、画面が変わって進めないときだけ AI が覚え直す形です。RPA の速さと、毎回同じ手順で動く確かさを保ったまま、止まりにくく、直しやすくなります。AI が RPA を置き換えるのではなく、RPA の弱点だった「作った後」を変える。Descarty は、この形を AI RPA と呼んでいます。
RPA、AI エージェント、AI RPA の違いは「RPA の課題と AI RPA での解決策」で、業務のステップごとの使い分けは「AI エージェントと RPA の使い分け」で解説しています。
今ある RPA をどうするか
すべてのロボットを一度に替える必要はありません。ロボットごとに判断します。
- 画面がほとんど変わらない社内システムで、決まった操作を大量に繰り返している:RPA のまま残す
- 相手のシステムに API や CSV の連携がある:公式の連携に置き換える
- 社外の Web システムを操作し、予告なく画面が変わる:Kitewell に移す
- 作った人がいない、中身が誰にもわからない:まず台帳に載せてから判断する
- 使われていない:止めて、台帳から外す
切り替えの進め方は「RPA の移行・リプレイス手順」で解説しています。
よくある質問
RPA は AI エージェントに置き換わりますか?
当面は置き換わりません。Gartner も、AI エージェントが当面 RPA に取って代わることはないとしています。決まった手順を大量に、速く、毎回同じように処理する仕事には、今も RPA が向いています。変わるのは、画面が変わりやすい業務や、判断が要る業務の自動化の作り方です。
今から RPA を入れるのは遅いですか?
遅くはありません。中小企業の導入率は 15% で、まだ伸びています。ただ、ブームのころに入れた会社が当たった壁は、入れた後にありました。選ぶ前に、画面が変わったときにどうなるか、作った人以外が直せるか、ロボットの一覧と動いた記録を見られるかを確かめます。
RPA の担当者の仕事はなくなりますか?
画面の部品を並べてシナリオを組む作業は、AI に任せられる部分が増えます。一方で、業務の手順を言葉で正確に書く、人の承認を置く場所を決める、ロボットの台帳と数字を見て直すか止めるかを決める、といった仕事は残ります。RPA を運用してきた経験は、そのまま生きます。
Kitewell で、RPA の作った後を変える
Descarty の Kitewell は、AI が作って AI が直す AI RPA です。業務の担当者が、会話で作り、会話で直します。RPA の伸びを止めた 4 つの理由に、次の仕組みで備えます。
- 画面が変わっても止まりにくい:手順を言葉で書き、AI が画面を読んで操作します。一度うまくいった操作は覚えて、次からは同じ手順で繰り返し、画面が変わったときだけ AI が操作を覚え直します。覚え直したことは実行の記録でわかります
- 会話で直す:アシスタントに頼むと、変更の内容とフロー図を示します。「適用」を押すまで保存されず、「元に戻す」で戻せます。会話の中で伝えた業務のルールや直し方は「覚えていること」に残り、後任の方も同じ所から始められます
- 止まったら知らせる:失敗や承認待ちを、Slack、Microsoft Teams、メールなどに通知します。「実行とログ」で、失敗した実行の件数と成功率を確かめられます
- 判断は、AI の読み取りと人の承認で:AI が書類や画面から値を読み取ります。どのステップにも承認を設定でき、承認、差し戻し、却下の判断が記録に残ります
- 全体を把握する:ロボット管理台帳を Excel で書き出せます
PoC では、Descarty が貴社のご担当者と一緒にワークフローを作り、効果を確かめます。本番のワークフローは、ご担当者が Kitewell のアシスタントとの会話で作り、直します。
まずは、よく止まるロボットや、作った人がいないロボットを 1 つ選び、先行利用パートナーとして共同で検証できます。詳しくは「先行利用パートナー様募集」をご覧ください。
まとめ
- RPA は、今のシステムに手を入れずに済む、現場でも作れる、効果が時間で見える、人を増やせない、という 4 つの理由で普及した
- 伸びが止まった理由は、入れた後にある。画面が変わると止まる、直せる人が足りない、作ったロボットが使われなくなる、判断が要る業務に届かない
- 数字の上では、RPA はオワコンではない。市場は伸び、自治体にも広がっている。悩みの中心が、入れることから保つことに移った
- AI で変わるのは、作り方と直し方。すべてを AI エージェントに任せるのではなく、AI が覚えた操作を繰り返し、画面が変わったときだけ覚え直す形が現実的
出典
- PRESIDENT Online:3メガ銀行の経費率がジワジワ上がる背景 揃ってリストラ策を打ち出したが…(2018 年 9 月 4 日、「プレジデント」2018 年 3 月 19 日号から)
- SMBC グループ二十年史:業務改革を通じたコストコントロールと生産性向上
- Information Age:RPA software market grew 63.1% in 2018, says Gartner(2019 年 6 月 24 日)。レガシーシステムについての Gartner の担当者の発言も同記事
- IT Leaders:国内大手企業のRPA導入率は50%超に、社内における“浸透率”も調査─MM総研(2020 年 2 月 10 日)。2018 年 6 月と 2019 年 11 月の導入率も同記事
- 矢野経済研究所:RPA市場に関する調査を実施(2020年)(2020 年 12 月 7 日)
- IT Leaders:日本のRPAは部門から全社へと拡大、57%の企業はIT部門がシナリオを開発─ガートナー(2020 年 2 月 21 日)
- Microsoft:Download Power Automate Desktop for Windows 10 to automate tasks and processes at no additional cost(2021 年 3 月 2 日)
- IT Leaders:国内RPA市場は年10%超で堅調に推移、オンプレミス製品が9割─デロイト トーマツ ミック研(2024 年 11 月 22 日)
- IPA:DX 動向 2025(2025 年 6 月 26 日)。レガシーシステムの状況は本文の 2.5
- MM総研:RPA 国内利活用動向調査 2024(2024 年 7 月 24 日)
- 総務省:令和7年度「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」の調査結果の公表(2026 年 4 月 24 日)。課題、KPI、シナリオの数は、同ページの「RPA 導入状況調査結果」(Excel、2025 年 10 月 31 日時点)から Descarty が集計。公表されていない団体は含まない
- Information & Data Manager:Broken Bots challenge RPA users(2022 年 7 月 8 日)。Robocorp の調査「The State of RPA」(2022 年 5 月)
- UiPath:UiPath Reports Fourth Quarter and Full Year Fiscal 2026 Financial Results(2026 年 3 月 11 日)
- @IT:「RAG」「プラットフォームエンジニアリング」は幻滅期に ガートナーがクラウドとAIのハイプサイクルを発表(2025 年 8 月 13 日)
- @IT:AI エージェントは当面 RPA にとって代わることはない(2026 年 1 月 16 日、Gartner による寄稿)
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