AI コールセンターと基幹システムの連携:通話後の入力を自動化
AI が電話に出る。通話を文字に起こし、要約する。コールセンターの AI の活用は、ここまで進みました。ところが、要約した受付の内容を、顧客管理や受注、修理受付の基幹システムに入れる後処理は、今も担当者の手作業ということが少なくありません。基幹システムに API がなければ、AI が出した結果を受け取る口がないためです。
この記事では、AI コールセンターと API のない基幹システムをつなぎ、通話後の入力を自動化する方法を解説します。
結論:通話の中と、通話の後を分ける
- 通話の中は、AI 電話や音声認識のサービスに任せる
- 通話の後の入力は、通話の結果を受け取り、基幹システムに入れる仕組みで自動化する
- 基幹システムに API や取込機能がなければ、画面を操作して入力する
- 住所の変更や解約など、取り消しにくい処理の前には人の確認を置く
- 通話の内容は個人情報を含むため、動かす場所と AI モデルの送り先を先に決める
AI が答えても、入力は残る
Gartner は、2029 年までに、よくある顧客対応の問題の 80% をエージェント型 AI が人の手を借りずに解決し、運用コストが 30% 下がると予測しています。従来の AI が文章の生成や会話の要約にとどまっていたのに対し、エージェント型 AI は自ら行動してタスクを完了できる点が違う、と説明しています。
問題を解決するとは、住所を変える、修理を手配する、といった処理を最後まで終えることです。そのためには、AI の出した結果が基幹システムに届かなければなりません。
一方で Gartner は、AI で顧客対応の人員を大きく減らす計画を立てた組織の 50% が、2027 年までにその計画をやめると予測しています。2025 年 3 月に聞いた顧客対応の責任者 163 人のうち、95% は人の担当者を残す考えでした。AI と人が並んで応対する形は、しばらく続きます。
どちらの形でも、応対の結果は基幹システムに入れる必要があります。基幹システムに API があれば、つなぐのは難しくありません。API がなければ、その入力が人の手に残ります(レガシーシステムと AI の連携)。
コールセンターで、人の手が残るところ
| 場面 | AI でできること | 基幹システムとつながらないと残る作業 |
|---|---|---|
| 通話中 | AI 電話による一次対応、オペレーターへの回答の候補 | 顧客の情報や契約の内容を、別の画面で探して確かめる |
| 通話の直後 | 文字起こし、要約、用件の分類 | 要約を読み、基幹システムの画面に転記する |
| 後処理 | 次に必要な手配の洗い出し | 住所の変更、修理の手配、折り返しの登録を、それぞれのシステムに入力する |
この記事で扱うのは、通話の直後と後処理です。通話中に基幹システムを見ながら答える用途は、後の「通話中の参照には向かない」で説明します。
通話の結果を受け取る 4 つの口
AI 電話や通話録音のサービスから、通話の結果を受け取る方法は 4 つあります。
| 受け取り方 | 向く場面 | 注意すること |
|---|---|---|
| Webhook | 通話の終了時に、文字起こしや要約をすぐに送れるサービス | 受け手の応答の決まりがサービスごとに違う |
| API(取りに行く) | 通話の記録を API で取り出せるサービス | 取りに行く間隔の分だけ遅れる |
| メール | 通話の要約をメールで送れるサービス | 本文の書式が変わることがある |
| ファイル(CSV) | 通話の記録を CSV で書き出せる、社内に置いた通話システム | 書き出す間隔の分だけ遅れる |
通話の終了時に Webhook で送る機能を持つサービスは増えています。たとえば ElevenLabs は、通話の分析が終わると、文字起こしや分析の結果を含むデータを、指定した URL に送ります。MiiTel も、文字起こしの終了時などに、通話履歴の情報を指定した URL に送れます。
Webhook の受け手には、サービスごとの決まりがあります。ElevenLabs は状態コード 200 の応答だけを成功とみなし、失敗が続くと Webhook を自動で止めます。MiiTel は、送り先を登録するときに確認用のトークンを送り、受け手にそのまま返すよう求めます。受け手の仕組みが、こうした決まりに合っているかを確かめてください。
例:住所変更の受付を、通話の後に入力する
住所変更の電話を受け、API のない顧客管理システムに入力する業務を、ステップごとに分けると次のようになります。
| ステップ | 担い手 | つなぎ方 |
|---|---|---|
| 通話が終わり、文字起こしと要約を受け取る | 決まった手順 | Webhook かメール |
| 顧客番号、氏名、新しい住所、変更の希望日を取り出す | AI | なし |
| 顧客管理システムで顧客を検索し、氏名と電話番号が一致するか照合する | 決まった手順 | 画面から読み取る |
| 一致しない受付と、本人確認が済んでいない受付を確かめる | 人 | なし |
| 新しい住所を入力する | 決まった手順(画面が変わったときだけ AI) | 画面に入力する |
| 受付番号を記録し、失敗を知らせる | 決まった手順 | 一覧と通知 |
AI が担うのは、話し言葉の文字起こしから、入力に要る項目を取り出す部分と、画面が変わったときの対応だけです。
人の確認をすべての受付に置くと、後処理の手間が確認の手間に置き換わるだけです。照合で一致したものはそのまま入力し、一致しないもの、本人確認が済んでいないもの、解約のように取り消しにくいものだけを人に回します。どこまでを自動で通すかは、誤りの影響を見て業務ごとに決めます。
通話中の参照には向かない
画面を操作して基幹システムを見る方法は、1 件に数秒から数十秒かかります。通話中に AI が顧客の情報を見ながら答えるには遅すぎます。
通話中の参照が要るなら、基幹システムの API、データベースの読み取り、またはあらかじめ書き出しておいた顧客の一覧を使います。画面の操作は、通話の後の入力と、後で折り返す処理に使います。
件数とセキュリティ:専用の VM で動かす
コールセンターの後処理は、件数が多く、個人情報を含みます。動かす場所は、この 2 つから決めます。
- 件数:画面の操作は、1 台のコンピューターで 1 件ずつ進みます。1 件にかかる時間と 1 日の件数、ピークの時間帯から、必要な台数を見積もります
- 個人情報:AI が文字起こしを読んだり画面を読んだりするときは、その内容が AI モデルの提供者に送られます。提供者の規約で、学習に使われないか、どれだけ保管されるかを確かめます
- ネットワーク:基幹システムが社内や閉域網にあるなら、操作するコンピューターも同じネットワークに置きます
確かめること:
- 1 日の通話件数と、ピークの時間帯
- 文字起こしに、カード番号など扱いに決まりのある情報が含まれないか
- 通話の内容を、外部の AI モデルに送ってよいか
- 基幹システムを操作する VM を、どのネットワークに置くか
よくある質問
通話中に、AI が基幹システムを見ながら答えられますか?
画面を操作する方法では、間に合いません。通話中の参照には、基幹システムの API やデータベースの読み取りを使います。画面の操作は、通話の後の入力に使います。
どの AI 電話や通話録音のサービスと組み合わせられますか?
通話の結果を、Webhook、API、メール、ファイルのどれかで外に出せるサービスなら組み合わせられます。Webhook の受け方の決まりはサービスごとに違い、そのまま受けられない場合もあるため、どの口で受け取るかは PoC で確かめます。
オペレーターの仕事はなくなりますか?
なくなりません。Gartner の調査でも、顧客対応の責任者の 95% が人の担当者を残す考えです。後処理を自動にすると、オペレーターは、照合で合わなかった受付の確認や、人が対応すべき問い合わせに時間を使えます。
Kitewell でつなぐ
Descarty の Kitewell は、AI が作って AI が直す AI RPA です。通話の結果を受け取り、AI が項目を取り出し、API のない基幹システムに入力するまでを、1 本のワークフローで動かせます。
- 通話の結果を受け取る:Webhook(有料プラン)や、社内のネットワークからの REST API で実行を始められます。メール(Gmail、Microsoft 365、IMAP)や CSV は、決まった間隔で確かめて読み取ります。Webhook は Kitewell の中継サーバーを経由して届くため、ポートを開ける必要はありません。閉域網では、社内の通話システムから REST API で実行を始めます
- 項目を取り出す:AI モデルへの質問や判定を、ワークフローのステップとして組み込めます。使うモデルはステップごとに選べ、社内やローカルのモデルも使えます
- 基幹システムに入力する:API のない顧客管理や受注のシステムを、Web でもデスクトップアプリでも、AI が画面を読んで操作します。一度うまくいった操作は覚えて、画面が同じ間は AI を使わずに繰り返します
- 確認が要るものだけ人に回す:どのステップにも承認を設定でき、承認待ちは Slack や Microsoft Teams、メールに通知します。差し戻せば、指定したステップからやり直します
- 止まったら知らせる:失敗を Slack や Microsoft Teams、メールなどに通知します。Dagu Cloud で同期すれば、設定したコンピューターからの報告が 10 分途絶えたときにも知らせます
- パスワードは AI に見せない:基幹システムのパスワードは名前で参照し、値は AI に見せずに Kitewell が入力します
- すべて記録する:実行ごとに、ログ、スクリーンショット、承認の判断を残します
法人向けプランでは、ワークフローを動かすコンピューターを、貴社のクラウド、オンプレミス、閉域網の VM や専用の PC に置けます。ライセンス、チームでの同期、更新も貴社の環境内で完結でき、社内やローカルの AI モデルと組み合わせれば、外部との通信は発生しません。ただし、画面を読んで操作できる AI モデルは限られ、小さなローカルモデルでは、通常、画面を操作できません。閉域網で使うモデルと、件数に合わせた VM の台数は、PoC の段階でご相談ください。
まずは、通話の後の入力が残る用件を 1 つ選び、2 週間・30 万円(税別)の PoC で確かめられます。合意した成功基準を満たさなければ、費用はいただきません。詳しくは「導入と料金」をご覧ください。
まとめ
- コールセンターの AI は応対や要約を担えるが、基幹システムに API がないと、通話後の入力が人の手に残る
- 通話の中は AI 電話や音声認識に任せ、通話の後の入力を自動化する
- 通話の結果は、Webhook、API、メール、ファイルのどれかで受け取る。Webhook の受け方の決まりはサービスごとに違う
- 確認は、照合で合わないものと取り消しにくいものだけを人に回す
- 件数と個人情報の扱いから、専用の VM の台数と置き場所を決める
出典
- Gartner:Gartner Predicts Agentic AI Will Autonomously Resolve 80% of Common Customer Service Issues Without Human Intervention by 2029(2025 年 3 月 5 日)
- Gartner:Gartner Predicts 50% of Organizations Will Abandon Plans to Reduce Customer Service Workforce Due to AI(2025 年 6 月 10 日)
- ElevenLabs:Post-call webhooks
- MiiTel:Outgoing Webhook 通話履歴の仕様と利用方法
2 週間の PoC で、貴社の業務で確かめる
本番と同じ画面とデータで Kitewell のワークフローを動かし、処理時間、成功率、止まったときの直しやすさを測ります。
画面の変更やシステムの更改で止まりがちなロボット、または手作業の業務を 1 つ選び、Kitewell で動かします。
ご用意いただくもの
- 対象業務の窓口となるご担当者(1名)
- 検証用のアカウントと、対象の画面へのアクセス
- 本番に近いサンプルデータ
- Kitewell を動かす端末
- 利用する AI モデルの API キー、または社内のモデルサーバー
30 万円(税別)
- 合意した成功基準を満たさなければ、費用はいただきません
- 初回のヒアリングで、対象業務と成功基準を合意
- 本契約に進む場合は、初年度の契約金額に充当
- 結果のレポート:処理件数、1 件あたりの時間、AI の利用料、止まった回数と理由
- Kitewell は現在パブリックベータ(0.x)です。機能や画面は変わることがあります