システム開発

MVP 開発とは

Yota Hamada
#tech
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はじめに:新規事業の種類

新規事業には2種類あると言われています。スモールビジネスとスタートアップです。スモールビジネスは、過去に前例があり、投資を行えば、ある程度の収益が見込めるビジネスです。例えば、飲食店や、医療クリニックなどです。しかしスモールビジネスは同じような会社がたくさんあるため、売上が数億円を超えるような大きな企業に成長する可能性はほとんどありません。

一方、スタートアップは前例がないものをプロダクトとして提供する取り組みになります。世の中にまだ存在しないプロダクトを作るので、9割以上は失敗します。しかし、もし顧客に受け入れられれば、競合が少ないので、大きく成長する可能性があります。

特に IT を活用したプロダクトは、地理的、時間的制約がないため、スケールしやすいと言われています。この記事では、スタートアップのプロダクト開発において最初の一歩となる MVP について解説します。

MVP (Minimum Viable Product) とは?

MVP は、Minimum Viable Product の略で、必要最小限の重要な機能だけを備えた、最小のプロダクトのことを言います。以下の乗り物の開発の図を見たことがあるでしょうか。これは MVP のイメージを表した図です。

mvp 出典:Making sense of MVP (Minimum Viable Product) – and why I prefer Earliest Testable/Usable/Lovable

MVP は、最初の状態から顧客が使うことを意図したプロダクトです。そうではないプロダクトは、最終的に完成するまで、顧客の課題解決に役立てることができません。MVP はすばやく顧客のフィードバックを得て、軌道修正するための方法論です。

新規事業立ち上げでの MVP の役割

MVP が必要な理由は、アイデアを最短で検証するためです。

スタートアップは、顧客のなんらかの課題を解決するプロダクトを提供する必要があります。顧客の課題を見つけ、それを解決するプロダクトが提供できれば、対価を得ることができます。しかし、顧客の課題ははっきりと分かっていないことが多いので、まずは顧客の課題を突き止める必要があります。そして、課題が分かったら、それを解決するプロダクトを作ります。ところが、これが難しく、実際に顧客に提供してみないと、課題とプロダクトが正しいかが分かりません。そのために作るのが、MVPと言われるものです。MVPとは、必要最小限で、プロダクトの価値を検証するためのプロトタイプのようなものです。

一般的な業務システム開発では、最初にヒアリングや、要件定義や、設計を行います。必要な機能はすべて洗い出して、失敗するリスクをあらかじめ無くします。しかし、新規事業では、このようなやり方は適していません。どんな課題があるか、どんなプロダクトが顧客に刺さるかは、実際に試してみないと分からないので、なるべく小さく早く開発して、実際に出して確認する、というやり方が適しています。

MVP は、一般的には3ヶ月以内に開発し、ローンチするべきだとされています。最初から正解を作る必要はなく、間違っている前提で開発します。そして顧客の反応を確かめて、方向転換します。そのため、多くの機能を入れずに、顧客の課題を解決する機能だけにフォーカスして開発します。多くの要件を組み込むと、それだけで変更が難しくなるため、最小限に開発を抑えることが大変重要になります。

MVP を開発するメリット

新規事業は、正解がないため、可能な限り早い段階で、顧客に受け入れられるかを確認する必要があります。最初から大きなコストをかけて作るとそれだけ失敗したときの損失が大きくなります。MVP を作ることで、失敗時のコストを最小化しつつ、次のチャレンジに向けたフィードバックを最短で得ることができます。

顧客ニーズの正確な把握

顧客ニーズを把握するには、インタビューなども行われますが、実際に料金を払って使ってくれるかは、プロダクトを出してみなければわかりません。MVP を最小のコストで作ってみることで、顧客のニーズに合致しているかを最短で知ることができます。

MVP の例

例としては、Stripe が挙げられます。2010年に Stripe がリリースされたときは、裏側のシステムはまったく仕組み化されておらず、顧客ごとにクレジットカード決済を行えるように裏側で手動で開発していました。システムをほとんどつくらずに、顧客のニーズを把握できていたという成功例です。

Doordash の例も有名です。Doordash は Uber Eats のように食事を家に届けるサービスですが、ローンチされたときは単に携帯の番号をのせただけの Web サイトでした。電話で注文を受けて、開発者たちが自分で配達をして、実際に需要があるかを調べていました。その結果、ニーズがあると分かり、プロダクトを開発して、いまでは大きな企業になりました。これも最小限の労力で MVP を開発して成功した例です。

オズの魔法使い

Stripe や Doordash のように、実際に 100% 動作する仕組みを作らずに、人力でカバーするやり方は、「オズの魔法使い MVP」や「コンシェルジュ MVP」と呼ばれます。実際には本格的な仕組みを作らず、裏で人力で動かすことによって、あたかもプロダクトが完成しているように見せる方法です。開発コストを最小限に抑えつつ、顧客のニーズを確認できるため、非常にスマートな方法です。システム開発を行うより素早くできるので、このような方法が可能か、最初に立ち止まって考えてみるのはいかがでしょうか。

MVP開発のステップ

アイディアの確認

MVP のアイディアは、一つの課題と、一つの解決策(プロダクト)にフォーカスします。いろいろな機能を入れて多機能にするのではなく、ピンポイントで顧客の課題を解決するアイディアを考えます。

例としては、Spir(スピアー) が挙げられます。Spir は、打ち合わせの予定を調整するだけのサービスです。たった一つの機能ですが、それが大変良くできているために世界中で利用されています。

ソフトウェアの開発では、「一つのことをうまくやる」ソフトウェアが優れているとされています。多様な機能を詰め込むと、その分、開発が複雑になり、スピードが遅くなるので、最初はできるだけシンプルなアイディアにしましょう。

プロトタイプの作成

MVP は、一人のソフトウェアエンジニアで開発するのが理想的です。一人で2ヶ月〜3ヶ月以内で開発し、ローンチすることを目指します。これより時間がかかってしまう場合は、機能を盛り込みすぎていないか確認しましょう。

実際の市場でのテスト

ランディングページを作ったり、実際に営業を行って、顧客の反応を確かめます。もしここで顧客の反応が思ったほどでなかった場合は、顧客に「何が足りないか?」「どのような機能があれば使いたいか?」といった質問をします。Google フォームを利用したアンケートでも良いでしょう。Google フォームでアンケートを作成し、プロダクトを説明するランディングページの URL をつけて送ることで、興味があるユーザがどれくらいいるかを把握することができます。実際にそのようにしてプロダクトの最初の顧客を獲得したスタートアップの例も見られます。

日本で有名な例は SmartHR です。Wordpress と Google フォームだけでランディングページだけを作って、Facebook 広告でニーズを検証しました。プロダクトも無く、ただの Web サイトだけの状態で顧客のニーズを把握し、いまでは大きな成功をおさめています。

顧客からのフィードバックの取得

MVP を作ったら、顧客からフィードバックを得て、MVPを改善するか、作り直します。これを繰り返すことで、顧客が本当に必要としているものを見つけることができます。

ITやシステムに詳しくない場合

MVP 開発は短期間で行う必要があるため、1人のソフトウェアエンジニアだけで素早く開発するのが適しています。外部の専門家に依頼する場合、請負契約では難しいため、準委任や業務委託の形で依頼するのが良いでしょう。

よく言われる MVP の落とし穴は、本来不要なものを作ってしまい、そのためにローンチが遅れることです。なにが必要で、なにが不要かをしっかりと見極め、無駄な開発工数をかけないことが重要になります。そのためには、技術者や専門家の意見を聞くことが大変重要になります。

また、最初の MVP に愛着心をもたずに、柔軟に作り変えることも重要です。最初のアイディアに固執しすぎて、コストや時間をかけすぎてしまわないよう、注意しましょう。

まとめ

この記事では、MVPと何かについて解説いたしました。御社のご参考になりましたら幸いです。

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